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「態度や気持ちがどうであれ、自分から何とかしようとする気持ちがない人に愛情を注ぐのは疲れたのよ。私からばかりなんて、もううんざりだわ」
「つまり、彼は、貴女との冷えきった関係を改善しようとする気がないと?」
「そうよ。いつだって、受け身なのよ。彼はね……欲しいなら手を伸ばすなり、努力するというのをしないもの」
相良は、数日後に接触した羽田と二人組の同僚の会話思い返す。
優しいが気弱そうな態度であり、自分からは、行動しない受け身な性格だというのを……そして、奥平に対しては、彼への愛情は薄れつつあるというのを確認した。
「愛情って、複雑なのよ。探偵さん……貴女も女性なら分かるでしょ?」
妖艶な笑みをみせながら、奥平は、傍らにあるハンドバッグに手を伸ばして、中から銀行の封筒を取り出した。
「依頼金よ。有難う……探偵さん……それと、私から貴女に1ついいかしら?」
「なにか?」
「貴女って……」
彼女が放った台詞に、笑みを消した相良は僅かに目を見開いたが、すぐにいつもの微笑みを浮かべる顔に戻した。
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