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「くっそ……!
なんでっ……学校ってのは…高い場所に……建てたりすんだ……よっ!?」
その正体は────長い、長い坂道。
距離にして…約300m。
しかもそれなりに傾斜のあるこの坂は、萩之浦学生にとっては避けて通れぬ苦行の道─────…
この試練に打ち勝ち、乗り越えた時こそ
俺は─────真の漢(おとこ)と成る事が出来るんだ………!
「────馬鹿な事考えてないで
そんなにキツいなら自転車降りて歩けばいいじゃない」
「……………………」
さも当然のように放たれた一言。
俺はその、甘い誘惑に心をへし折られてしまい─────ペダルから足を離すと、そのまま地面に付けて自転車から降りた。
瞬間、ぶわっ!と汗が噴き出す。その量はハンパない。
…朝のとは違う、運動による純粋な汗。
カゴに入れてる鞄からタオルを取り出し汗を拭き、一通り拭き終わったところで────…
「はぁ……はぁ…はぁ…」
「………はぁはぁ言いながら私を見ないでくれるかなこの変態○○○野郎」
息切れのせいで喋れなかった俺に、遠慮無く言葉の暴力を浴びせてくれた。
「─────っ!?
だ、誰が変態やろゲフッゴフォっ!!?」
反論しようにも息切れのせいで言葉が続かない。息が詰まり噎せてしまう。
「呼吸まだ落ち着いてないのに喋ろうとするからよ……
取り合えず言いたい事があるなら、先に呼吸を整えるのね…呼吸困難で死なれたら困るし」
「そう…だな…」
言い方にトゲはあるものの、一応心配はしてくれているっぽい。
途切れ途切れで応え
俺は言われた通り、呼吸を落ち着つかせる事にした。
────ちなみに
さも最初から居ました的に現れたこの人物は[佐久間 瑞希]。軽い癖っ毛の入ったセミロングの髪型にややつり目の瞳が特徴の、俺と同い年の女で、物心つく前からの腐れ縁。
………まぁ、幼馴染みともいうな。
家を出て直ぐに遭遇し、一緒に登校している訳だ。
以外とスタイルも良く
美人の部類に入る為、モテてそうなものなのだが…
コイツ結構、人見知りが激しい奴なうえ
初対面の人物に対する口の悪さと、人を見下すような冷めた態度が災いし、男どもが畏怖してしまい彼女に寄り付てくれないのだ。
しかもこの特性のせいで、彼女には友達と呼べる人物が指で数えれる程しか居ない。
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