プロローグ

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「………」 始まったな。と、第1に思う。 俺が今居る場所は夜の学校。校内の、2階へと続く階段前。 …リアル過ぎる校内の雰囲気と外の風景。小さなひび割れをも緻密に再現された壁。現実と錯覚してしまいそうな、真夜中特有の肌寒さ。 そして…その肌寒さを直に感じ取る自分自身の感覚。 ……ソレは有り得ない程、精巧に造られた世界。 ───夢の始まりは いつもこの場所からだった。 「はぁ…」 不意に、忘れていたこの夢の内容を思い出した俺は、途端に気分が滅入ってしまう。 ただ、その原因は“夢”自体の事では無く、夢の“後”。 どういう仕組みかは分からないが、夢から覚めた後はとてつもない疲労感が俺を襲う。 酷い時は起き上がれなくなる程に。 そのくせ睡眠は充分に採(と)ってるので眠気自体は無い。故にそのせいで、意識を保ったまま、下手をすれば丸1日、この疲労感と向き合わなければならなくなる。 一体、コレはいつまで続くんだ…? そう思った時───… 『ハァッ───ハァッ──ハァッ───…!!』 「───始まった、か」 ソレは気付いたと同時。 俺の横を凄い勢いで通過し、激しく息切れを起こしながらも階段を全速力で駆け上がる“かの人物”。 その様子は、ハンターから狙われ必死に逃げる獲物(エサ)そのもの。 かん、かん、かん…と、小さくなっていく足音を聴きながら、俺は次に起こるであろうシーンを思い浮かべる。 ……… 更に気分が滅入ってしまった。 また… “あの場面”なのか───… これでもう何度目になるだろう。“アレ”は…マジでもう、見たくないのに…… ────ブゥン 耳障りなノイズと共に背景がぐにゃり、と捩れる。 新たな場面に意向する時に起こる現象なのだが…… 「っ────」 ───何度体験しても、この場面の変化には未だ馴れない…軽い吐き気を感じたがどうにか堪え、変化し終えた次の場面へと目を向けた。
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