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『恨むなら
あの場に居合わせた自分自身を恨むこったな───…』
────その男の言う通りだ。
何故、殺されると理解してるのに、俺は動けないんだ…
何故俺はそいつを────“俺”を救う事が出来ないんだ…!
『じゃあな────小僧』
────どすっ!
『ッッッ!!』
「く───…」
────肉を突き刺す厭(いや)な音。
“俺”の胸元に突き付けられた紅い槍に、身体はなんの抵抗もせずに刺され、吸い寄せられるように肉を抉り、心臓を貫く──…
目を背けても、既に脳裏へと焼き付けられたビジョンが鮮明に浮き出され、その場面を否応無く再生させる。
何度も視た、“俺”が殺される光景…
それが、この夢の終わり。最悪の結末。
終演があるかどうかも解らない、この悪夢を……
俺はこれから先も、ずっと見続けなければならない……のか?
「…………な」
────ふざけるな
────いい加減にしろ
何故“俺”が殺される場面を、何度も視なきゃならないんだ…!
絶望視したのは一瞬のみ。それ以上に沸き上がる怒り。
こんな夢見せつけて…一体なにを俺に伝えたい?
近いうちに俺は死ぬとでも言いたいのか?この有り得ない設定で?
……馬鹿にしてる。もう沢山だ。理不尽過ぎるにも程がある。
「───上等だ」
マジで頭にキた。
身体を動かせないから救けられないと諦めて、今まで耐えてきたが……限界だ
こうなったら是が非でも“俺”が殺される結果を変えてやる。
この夢の結末を……
“俺”が死ぬという、ふざけた運命を────俺が変えてやる。絶対に!
すぅ………と
景色が、色褪せていく。無色に塗り潰されていく。
俺が…目覚めようとしてる。
現実へ戻ろうと、なにかに呑み込まれる感覚。
「そう…
ぜ……ったい…だ────…」
虚ろう意識の中
確固たる決意を以て、俺はその誓いを心に刻み込んだ。
この誓いが
決して揺らぐ事の無いように…
深く───深く────…
『──────────……』
「…………………え?」
意識が途切れる寸前
どこからともなく声が聞こえ、何かを俺に…………告げた──────…
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