プロローグ

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それからシャワーを浴び、汗をきれいに流し落としてから制服に着替え、リビングへ。 そこに兄貴の姿は無く… テーブルには朝飯と、用事があるから先に行く。という書き置きが。 「………用事?」 少し考え、あぁ成る程、と納得した。 兄貴は週に何日か 朝、学校に行く前に必ず寄る場所がある。 [如月ベーカリー]という、開店時間が早いパン屋が家の近くにあるのだが、そこに朝のみ手伝いにくる、店の主人の1人娘────[如月 優衣]さんに会いに行ったのだろう。 珍しく寝坊した兄貴が朝食を用意出来なかった日があって、2人で店にパンを買いに行った時、店番をしてたのが優衣さんだった。 大学生で確か年齢は……20歳ぐらいだったか? サラサラとした茶髪のロングヘアーに、くりっとした瞳。 性格と口調は少しキツめだが、ソレを不快に感じさせない雰囲気。 そして何より、客1人1人に対して分け隔てなく出せる営業スマイルでは無い愛らしい自然な笑顔… 兄貴の好みとして、まさに直球ど真ん中。 ────まさに一目惚れだ。 それ以来 兄貴は優衣さんが居る日は店によく通い、優衣さんと親密になろうと積極的にアプローチをかけている。 ………が、その辺は年上の女性としての余裕なのか、上手くあしらわれているようで、それほど進展は無いらしい。 「いただきます」 今日も頑張って優衣さんを口説きにかかる兄貴に成果がある事を願いつつ 俺は1人寂しい朝食を採る事にした。
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