――邂逅――

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その人を初めて見かけたのは、旅の途中。 仲間と上洛している最中に知った。 「た、大変です!あの人達が!?」 一人の浪人が息切れしながらも急報を告げる。 ――あの人達―― その言葉が指す人物が、直ぐに脳裏に浮かぶ程問題のある人物。 その場にいる全員が、一斉に反応する。 身を強ばらせる者。 ため息をつく者。 おろおろする者。 そのどれでもない反応をしたのは『近藤勇』。この旅の間、宿係を命じられた僕の家族だ。 「行こう」 短く言い切り、近藤さんは既に何度目かわからない問題解決に乗り出した。 雪こそ降らないが、やはり空気が冷たい季節。 だけど今は夜だというのに暖かい。 そりゃそうだよね。薪焚いちゃってるもん。 「…これはっ」 皆が息を飲む。 別に薪事態は珍しくないし、寒さしのぎには一番手っ取り早い。 ただ… その薪は町の往来で焚かれていた。 この木造の町のど真ん中で。 今日は風が強い。 火が移ればあっという間にこの町の全てが呑まれるだろう事は想像に難くない。 この場にいる全ての人が、正気を疑った。 薪の前で鎮座するその人を。
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