13人が本棚に入れています
本棚に追加
「芹沢さん…」
「おぅ…やっぱりあんたが来やがったか」
近藤さんの呼び掛けに、こちらを振り向きもせず芹沢と呼ばれた男は答える。
その不躾な態度にカチンとくるものを覚え、僕は一歩踏み出そうとして―――…
「止めなさい、総司」
止めたのは、馬鹿にされた張本人の近藤さん。
「でもっ」
「いいから。それに…今踏み込むのは得策じゃない」
「…え?」
近藤さんの言葉を理解するのに、さして時間はかからなかった。
たったの今まで、確かに芹沢は薪にマキ代わりの机や椅子の破片を投げ入れていた。
とても無防備に。
だのに、いつのまに動いたのか芹沢は抜刀していた。
踏み込んでいれば、一刀に伏せられていたのが嫌でも解る。
「……っ」
「勘が良いな、近藤さんよ…それに坊主もな」
「馴れ馴れしいって…言われませんか?」
噛みつく様にぶつけた言葉。だけど芹沢は口角をほんの少しだけ持ち上げただけ。
……笑われた?
「芹沢さん。私達の要件は解っておられるはずです」
「これか?」
ひょいとマキを一本持ち上げ、芹沢はそのまま薪へとくべた。
最初のコメントを投稿しよう!