はじまり

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「――ってうにが言ってます。」 『綾も言ってたにゃ』 とりあえず1階に降りて、椅子に座ってお茶を飲んでいた母さんに状況を説明してみました。うにが暑くて死にそうだと てかここ涼しい 「まあ。そうなのうに?」 「そうなのか?だって」 『綾の意見も入ってるにゃ』 「マジ今年の夏パねぇって言ってます。」 『言ってないにゃ』 母さん‥だけじゃなく父さん、姉さん、つまり家族は俺が猫と話せることを知っています。 最初は小さい子供の言うことだ、信じたフリをしてやろう、と思っていたらしいのですが、あまりにもネコ太(当時飼っていた猫です。まんまのネーミングは俺)との会話が成り立っているように見えたので徐々に信じ始め、最終的には俺の指示通りにネコ太に動いてもらい、3人のリクエストを聞いて俺が言葉にしてネコ太にいろいろやってもらいました。それでやっと完全に信じたみたいです。 ちなみに ……もうネコ太はいません。 「じゃあうに。この部屋にいればいいんじゃない?」 「……………」 『綾?今母親はなんて言ったにゃ?』 盲点でした 「でも母さん?俺、クーラーかかってる部屋のほうが課題が進む気が……」 「課題は7月中に片付けるって言ってたじゃない」 ……確かに母さんにそんなことを豪語した記憶があります。しかし今日はもうすでに口約のタイムリミットを過ぎに過ぎた8月7日にも関わらず、課題は半分しか終えていません。俺の意志の弱さが際立つ事実です。 俺が反論できずしばらく黙っていると(うにはなんのこっちゃ分からんという顔をしています)母さんが先に口を開きました。 「冗談よ。こうも暑いとやってられないわよね。クーラーのこと、父さんに頼んどいてあげるから」 「やぁっふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううういい!!」 突然叫んだ俺にびっくりしたのか、うにが素晴らしい横っ飛びを見せます。 「うに!新しいクーラー買ってもらえそうです!」 『そうかにゃ。今思ったんだけど、綾の部屋にクーラーつかなくても、この部屋にいれば涼しいにゃ』 「そんなこと言わずに喜んで!うに!」 俺はうにを抱き上げて頬を異常な速度でスリスリします。 『綾…熱いにゃ…』 「そうっすね……」 熱くなるほど摩擦を繰り返したうにの頬は少し毛が抜け、俺の頬も赤くなりました。 「ホント仲良しね」 そんな俺たちを母さんはニコニコ笑いながら眺めていました。
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