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「これより第三十二回入学式を始める」
こののぶといさんが司会ですかい、キャスト間違ってません?という軽口を心の内だけに留めて、いよいよ始まった入学式に気持ちを向けた。
――しかし、式ってのはやはりかったるいもんで。
「サクさん!」
いつの間にか舟を漕いでいたようだ。メイリアに揺すられ、やっと現実に戻る。
「もー。 学園長のありがたいお話し終わっちゃいましたよ」
「え、うそ。 ……もったいないことしたかな」
ま、いいか。学園長の話しを聞き逃しても、本当に大事なことは他の先生が何回もリピートしてくれるだろうし。
そう思い目を擦る俺を尻目に式は進む。どうやら、今度は新入生代表の挨拶のようだ。
壇上に上がったのは女の子のようだ。少し碧がかったロングヘアーと花車な身体がそれを物語っていた。肌も病的に白く、俺には精巧な人形のように見えた。
「ふわー、これまたスゴい美人さんがでてきましたね」
頷いて返す。
「あれ、あの人――」
メイリアが何か次の句を紡ごうとする前に、驚音――風の天恵による音の増大に乗せられた新入生代表の挨拶が始まった。
暖かい春の日射しが云々、という定番のお堅いスタート。こんなのいちいち聞いてられっか!
俺はまた、瞼を閉じた。
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