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“そいつ”は勢いよく椅子を引き、弾けるように立った。椅子が勢いに負けて倒れようが、“そいつ”がそれに構う余裕はなし。
とんだ乱暴者だ、と思う奴もいるかもしれない。だが違うんだ、許してやってくれ。
――“そいつ”は照れ屋なだけなんだ。
「は、はじめまちて!」
完璧なまでのデジャヴ、というよりもはやリピート。
「ボクの名前はメイリア=センチュリア! 火の国出身でつ! 学園生活では頑張りましょう!?」
教室が揺れた。
今回ばかりはクランジア教諭でも騒ぎを抑えられなかった。
ある者は叫び、ある者は笑い、ある者は伏した。
伏した奴に関しては、そいつの机を赤い液体が伝っていたので、極度に興奮したものと見られる。
「――な?」
後ろのポカーンとした情報通に問う。持ち合わせのデータにはなかっただろう?
「こいつぁ、驚いた」
いつの間にかメイリア!メイリア!とメイリアコールも起こるほど盛況しており、事実、今日のピークだった。
そして当然、この後の自己紹介は俺を含め、白けて終わってしまった。
なんだコレ。
……あ、後ろの情報通の名前を聞き忘れてた。
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