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気付いたら、そこはもう船上だった。なんとなく予想できたことだが、俺は起きれなかったのだ。
それを見越していた両親は、俺の荷物と俺自身を担いで船に放り投げ、感動の別れもないままに、俺はいつのまにか旅立ってしまっていた。
「何だかなぁ」
苦笑しながらため息を吐くと、船主のオジサンが盛大に吹き出した。
「おめぇのオヤジから言付けが届いとるよ。『一人前になるまで返ったくるな』とな! ほんで、おふくろさんもこれまた無情なもんだぜ、『これでご飯を作るのが楽になる』だとさ!」
なんて非常な両親〈ヤツラ〉だ。まぁ、元から期待なんぞしていなかったが。
そんなことは、これから起こるであろう大きな出来事の前ではとても些細なことになるだろう。寧ろ、笑い話しになるかもしれない。
「あと、どれくらいでファルムに着きますかね?」
「小一時間ってとこじゃねぇか? おめぇが寝とる間、相当トバして進めておいたからなぁ」
ファルムは、海で大きく隔てられた四つの大陸の中心に位置する大陸全体を国とした、永久中立国だ。在住している人間のほとんどが学生の為、学生天国とも呼ばれていたりもする。
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