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胸の高鳴りは昨夜のまま、俺は揺れる船上から見える水平線にも目を取られず、落ち着かない身体をチャカチャカと動かしていた。
ああ、暇だ。
「せっかくのフリータイムだし『天恵』の練習でもするか」
天恵、それは神より与えられた力。ヴァルカンに愛されれば火を、レヴィアンに愛されれば水を、ヘヴィロストに愛されれば風を、ティターンに愛されれば土を顕現、或いは操作することができる。
当然、レヴィアン出身の俺は水の力を顕現、操作できる。
水の力を借りるには、レヴィアンに感謝の辞を述べることから始める。これはおそらく、他の能力も一緒だろう。
「天に益します、我らが神レヴィアンよ。其が水の力、我ら水の民に分け給え」
身体に何か得体の知れない、しかしながらどこか懐かしいような『気』が入ってくる。
よし、イケる。
「『フォローウェーブ』!」
船の後方に、追い風ならぬ追い波を発生させる。
「おぉっ? 悪いなボーズ!」
船主のオジサンも喜んで手を叩く。
燃料消費を抑える為にやった追い波であるが、オジサンはこれを『急げ』の意味と取ったのか、エンジンをフカし、船のスピードを更にあげた。
「ちょ、速っ!」
振り落とされるかと思った。
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