一話◇「永久中立国、ファルム」

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 * * *  慣れない船旅に、脳味噌まで揺られ揺られた結果、そこには船酔いでつぶれた俺がいた。 「し、死ぬ……」  船着き場から一番近い酒場の一室を借りて今は体調を整えるため、一時の休息を噛み締める。 「坊や、一発どうだい?」  ドアから顔を出す一人の酔っぱらい。一々構いに来るなと言ってやりたいが、今はそんな元気、一センチたりとてない。  あれ、俺今何回『一』って言った?  * * *  酒場の主人から気付けの薬をもらうと、いつの間にかコンディションは元の状態にまで戻っていた。  礼を述べ、金を払うと、いてもたってもいられなくなり、酒場を飛び出した。 「ここが、ファルム……」  賑やかな船着き場では、漁師たちが自らの収穫を自慢しあうように、魚を片手に談笑していた。  あの人たち、それぞれの種族は違うのだろうか、そう考えると一度大きく心臓が跳ねた。  ――こうしちゃいられない!  俺は走り出した。  友達を、好敵手を、作るんだ!
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