現実・・・ある病院にて

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とある県にある、総合病院の病室。 雨の降る県道で、車と接触した少年が手術を終え、意識の回復を待たれている。 重傷の身体には、幾つものチューブが付けられており、心電図の音は静かに一定のリズムを刻む。 傍らには、母親が少年の手を握りしめ、祈るように額に当てている。 病室のをノックの音が響き、白衣を纏った担当医と看護婦が入ってきた。 担当医は少年の様子を眺めて、母親に告げた。 「・・お母様、最善を尽くしましたが・・意識の回復には、この数日が山です」 そう言うと、少年の目蓋を開き、ライトを当てる。 何の反応も示さないのを確認すると、看護婦に点滴の指示を出す。 「もちろん、これからも最善を尽くします・・必ず意識を回復させます」 担当医は、誓うように眠ったままの少年を見ながら母親に約束し、病室を出ていった。 「母さんも・・・母さんも頑張るからね・・・潤」 母親は、涙を堪えながら更に力強く潤の手を握りしめた。
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