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四月。それは、出会いの季節。新たな始まり。
咲く桜が、少年少女を桜吹雪と共に今までとは違う世界に連れて行ってくれる、そんな一時。
少年・幸村春輝(ユキムラ シュンキ)は、そんな季節に桜並木の中を歩いていた。見慣れない景色を確かめるように、辺りを眺めながら歩く幸村少年。
それもその筈。
彼は今年度に、この桜ヶ市(サクラガイチ)に引っ越して来たばかりである。
肩に触るか否かという、男にしては長い漆黒の髪を揺らしながら歩く彼は、大きな建物を前に立ち止まる。
そう。その建物こそが、彼の目的地。
「…ここか」
桜ヶ学園高校。高校二年である彼の転入先の高校である。
今は、体育館に全校生徒が集まっての始業式の真っ最中。一年の始まりを象徴する、大切な行事。
…なのだが。
「…九時」
校舎の壁に掛かってる大きな時計の針は、既に九時を優に越えていた。
「…ま、しょうがねぇか」
小さくため息を吐くと、ゆっくりと再び歩き始める春輝。
幸村春輝。
彼の転入初日は、とんでもない大遅刻から始まった。
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