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その頃。
噂の転校生その人である春輝は、のんびりと廊下を歩いていた。
勿論クラスでは転校生のことが噂になっていて、かつHR中で静寂に包まれているなどとは知るよしもない。
「2-A…二階か」
ゆったりとした歩調で目的地である2-Aへと向かう。
階段を登り、長い廊下を突き当たりまで行ったその場所。
そこに2-Aは陣取っていた。
ゆっくりとした歩調で歩き、2-Aの入り口まで着いた春輝は、ガラガラという音と共に扉を開く。
その次に感じたのは、クラス中の視線。突如現れた謎の男に、椅子に座る生徒達は目を丸くして疑問の視線を向ける。
そんな中、
「ゆ、幸村くん!?」
唯一春輝の素性を知る担任が叫び声をあげる。
担任と春輝以外の人物達は、未だ状況が掴めずに、目を白黒させている、その中で。
「あの~、先生?この人は?」
その状況下で、ある生徒から当然の問いがなされる。それを聞き、クラス中の視線は春輝から担任へと移って行った。
突然矛先が自分に向いたことに担任はしどろもどろになりながらも、慌てて口を開いた。
「あ、こ、この人は───」
「…転校生の幸村だ」
担任教師の台詞を奪い取って言い放たれた春輝の言葉に、一瞬押し黙るクラス一同。
そして嵐の後の───
「ええええェッ!?」
静けさの如く、クラス一同の叫び声が校舎中に木霊した。
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