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「もしかしてお前、『黒猫』幸村か!?」
敬遠していた事態の勃発に大きなため息をついた春輝は、俯かせていた顔を上げながら、
「…その通りだ」
静かに呟きつつ、その男子生徒を睨む。睨まれた少年は、その迫力に怯むことしか出来ない。
事情を知らない女子生徒達の中には、「かっこいい~」や「イケメ~ン!」と言った春輝の容姿を褒める声を上げる者もいるが、事実を知る男子生徒の一部は怯えるような目付きで春輝を見ていた。
「それどういうことなの、世良くん?」
世良くんと呼ばれた先程の男子生徒は、怯えたその目を春輝に向けたまま、説明を始める。
「隣町で名を馳せた、最強の不良の通称ですよ。それが"黒猫"。
自分から喧嘩は決して売らない。しかし、喧嘩を受ければ100戦100勝。背中に常に何かが入ったケースを背負いながら戦うが、自らの体はおろか、ただの邪魔にしかならないそのケースすら傷付けさせずに戦うその強さ。
その相手に不幸を与える圧倒的な強さから、畏怖の念を込めて『黒猫』と呼ばれる様になった…。
それが彼の伝説ですよ。」
皆の視線が春輝に集まる。
最早2-Aの教室で、言葉を発する者はいなかった。
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