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最初、世界に生命は存在せず、星の光と数人の神々だけが存在するだけの世界だった。
自分たちの世界に退屈した神々は後に地球と呼ばれる惑星に生命をつくりだした。
それが人間。
そして神々は惑星に最も近い星である月に住み着き、自分たちの作り出した人間を観察することを至上の楽しみとした。
「これが私たちの月の国の成り立でしてよ、わかった?杜若」
「これといってオチの無い退屈な話ですねみちる様」
ここは平和な月の国、人間という生命体の生活を観察するために作られた国であり、神々は自分の仕事を終えると大半がここに集まって、それぞれに好きなことをして自分たちの暇を持て余していた。
伊織杜若【いおりかきつばた】もそんな神々の一人だ、外見としてはそれこそ15程の少女だがこれでも一応神々のなかでも上位の階級に位置する『時空と空間の管理者』【クロノススターター】である。
「流石は杜若、まさか私が作った訳でもない神話に落ちを求めるなんて……」
「そんな面白みのない話を延々と語ってくださらなくてもよろしかったのに」
「あなたが語ってと言ったから語ってあげたんじゃない!」
神話を語っていたのは野点【のだて】みちる、『重力と次元の管理者』【ミラージュスターター】であると同時に、月にいる神々の中で最も美しいと言われる女神様で、誰にでも同じ態度で接する所から性別にかかわらず多くの神々に慕われている。
「ところでみちる様、そろそろ会議が始まる時間ですよ」
「あぁ、その会議は行かないから。どうせまた私の見合いの話でしょうから」
みちるはため息をついてやれやれといった様子で首を横に振る、その姿は同性の杜若からみてもとてもかわいらしい、いや美しいといった方が正しいだろう。
「なるほど、私と結婚予定のみちる様にとってはそんな会議不要ですもんね」
「いつからそんな予定になったのか聞いてみたいわ」
そんなくだらない会話をしているとどたどたと騒がしい足音を立てながら一人の男性が部屋の中に駆け込んできた。とても焦っていたのか息を切らしている。
「野点様、こういった催し物の開催が今日の議会で決定しました、野点様が居ない隙に」
手渡された紙にはなにやら大きな文字でこのように書いてあった。
『月姫争奪!大舞踏会兼武道会』
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