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──8年も離れてて自分からはなにもしなかったくせに、貴文にはあたしひとりだけだったなんて、ほんとうにそんなおめでたいこと、思ってたの?
美村麗亜とそういう仲だったから、あの夜貴文はあたしを抱かなかったんじゃないの?
ほんとうはとっくに昔の気持ちなんて冷めてたのに、《和泉朱里》が欲しくなっただけかも知れない。
いや、いや、いや。
貴文のことを疑う自分も、こんな汚いことを考える自分も、《和泉朱里》である自分も、なにもかもがいやだ。
ここにいない彼を信じられない自分が──いやだ。
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