5871人が本棚に入れています
本棚に追加
/374ページ
「よ、朱里。今日はよろしくな」
スタジオに到着すると、長身の男が入口に立っていた。
「こんなとこに無防備に立ってて、ファンに見つかっても知らないよ」
「だぁーいじょーぶ。警備員さん、優秀だから」
男は朱里のサングラスをひょいと取り上げると、彼女の顔を覗き込む。
「おまえ、大丈夫か? 見たぞ、記事」
朱里の後をついて来た九鬼が、あっと声を上げた。
「おはようございます、倫弘くん。……あの、今朱里にその話題振らないで」
「何で?」
九鬼は男にそっと耳打ちする。
菅野倫弘(スガノ ミチヒロ)、28歳。
8年前渋谷でスカウトされてから、歌手と俳優の二足の草鞋を履いて活躍中の、いわゆる「イケメン芸能人」。
九鬼からさっきのいきさつを聞いたのか、倫弘は苦笑しながら再び朱里を見た。
.
最初のコメントを投稿しよう!