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「……貴にいに会ったからって、膨れっ面することもないだろーに」
短く切り揃えられた金髪をがしがしと掻きながら、倫弘は朱里のサングラスをかける。
「うるさいなぁ。気分悪いもんは仕方ないじゃない」
朱里は倫弘からサングラスを取り返すと、たたんでパーカーの前にかけた。
スタジオの中に入り、はらはらと様子を窺う九鬼をよそに、朱里と倫弘は並んで歩き出す。
「……ま、未だに何考えてるか判んねえからな。あの朴念仁だけは」
「貴文の話はもういいったら」
「よくねえよ。おまえがいつまでもぐだぐだふっ切れねえから……ぐは」
言葉の途中で、朱里が軽く握ったこぶしが倫弘のみぞおちに入った。
力を入れてなかったからよかったようなものの、倫弘は軽く咳込む。
「顔じゃなかったことに感謝してよね」
「おま……っ、相変わらず可愛くねえっ! いつかファンにばらしてやっからな」
朱里は倫弘に背を向けると、用意されたメイク室に駆け出した。
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