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朱里が倫弘と貴文に出会ったのは、まだ10歳の頃だった。
親同士の仲が良く、朱里は母親に連れられ度々倫弘の家を訪ねていた。
ビスク・ドールと見まごうような肌の白さと、アイライン無用のぱっちりとした瞳。
幼い少女をどうこうしようというわけでなく、倫弘は朱里を純粋に妹分として可愛がり、従兄弟の貴文に自慢した。
大学の演劇サークルでの活動に限界を感じ、いつか自分の劇団を旗揚げするという夢を抱き始めていた貴文は、一目で朱里に惚れ込んでしまっていた。
「いつか朱里を看板女優にして、俺は脚本を書くぞ」
朱里の美少女ぶりに磨きがかかって来た13歳の頃。
夏休みに入ったばかりのある晴れた日、貴文が本気でそう言い出した。
蝉の声がわんわんと鳴り響いていたのを、今でも覚えている。
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