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ギターを始めて、それがようやく様になってきた18歳の倫弘は、生来ののりの良さですぐに貴文の言葉に賛同した。
「貴文、朱里のヤツ歌も行けそうだぜ。たまに歌わせよう。俺、音楽担当するから」
ふたりの兄貴分が盛り上がる姿に、朱里は深く考えずに頷く。
親より、同級生の友達より、曖昧な淡い恋より、朱里は3人でいたかった。
可愛いと褒められて、もっときれいになりたいと思った。
声がきれいだと褒められて、もっと自由に歌えるようになりたいと思った。
そうすれば、この時間をずっと守って行けると、朱里は無邪気に──そう、信じていたから。
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