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悔しくて、憎らしいその対象を握りしめてぐしゃぐしゃにした。
自分というひとりの人間の尊厳を犯されたと感じることは、今日が初めてではない。
けれど、慣れることはどうしてもできなかった。
慣れてしまったらきっと、声も言葉も感情も、もう出てこなくなる。
そうなってしまったら、もう自分という人間には価値がない。
だのにどうして、そのたったひとつしかない自分の価値を、世間はこぞって奪おうとするのだろうか。
発散出来ない悔しさはやがて脱力感へと姿を変え、既にぐしゃぐしゃのそれから手を放した。
しわだらけのそれは、週刊誌。
そこには、《歌姫ご乱心》と大きな文字でレタリングされていた。
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