絶望の渦で…

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3人の関係としては、この奴隷小屋の皆に食料を分け与えるなどして、人間関係が広そうなフォルスがそんな余裕などなく、まだ生きるのに精一杯だった頃からの付き合いである。 あの残忍なまでに強いフォルスが無価値な奴隷として扱われるほど弱かった時代から苦難を共に歩んだだけあり、3人の関係は非常に深いものだ。 そんな3人が狭い部屋にひしめき合いながら、会話が始まるとスタートを飾ったのは、あどけなすぎる童顔のルカだった。 「今日もまたフォルスさんのおかげで命拾いしました」 はにかみながら、礼を口にするルカにタミーは顔をしかめる。 「は、何言ってんだ? ルカも今日から奴隷剣士として剣闘することになったんだろ? リスクは高いが勝てば、報酬に食料をもらえる。生き残ってんだから、食料ももらえてんだろ?」 タミーが疑問に思った部分を説明し、突き付けるとルカは暗く笑みをこぼして首を振った。 「今日はフォルスさんの剣闘が凄まじくて、僕のデビューは持ち越されました」 「あぁ…すまない、ルカ。派手にやったから闘技場を少し破壊したんだ」 「まったくだ。今日、剣闘が組まれてない俺や他の奴隷たちで、あのデカ物の首から下、片付けたんだぜ? しかも、デフのくそ野郎、飯も寄越さねぇときた!」 ルカと悪態つくタミーにフォルスが軽く頭を下げる。 ちなみにデフはフォルスたち奴隷を飼っているあの太った家主の本名である。 「いえいえっ!! 謝る必要ないですよ! フォルスさんが僕の剣闘を潰してくれなかったら……僕は今ここにいなかったかもしれないんですから……」 ルカは慌てて、フォルスに頭を上げさせた後、消え入りそうな声で呟きながら、顔を俯かせ、肩を落とした。
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