絶望の渦で…

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広いようで狭い、奴隷小屋の中に怒鳴り声とドスドスと重たい足音が反響しながら、3人がいる部屋へと確実に奴隷たちの恐怖と嫌悪の対象の存在が近づいてきた。 タミーは不機嫌さを激しく露呈するように舌打ちし、部屋の壁にすがって、事が過ぎるのを待つことを決めて、ルカは部屋の隅で座り込み膝を抱えて震えている。 2人をできるだけ、デフに接触させないようにフォルスは部屋を出ると、ちょうど鉢合わせることとなった。 「フォルス!! お前には一人部屋を用意してやっているのに何故こっちにいるんだ!? 探すのが面倒だろうが!!」 「あぁ…すみません。みんなといる方が落ち着くんで……」 デフに怒鳴られてもフォルスは飄々とした態度で向かう。 奴隷と家主の関係上、大体がルカのように奴隷は家主に怯えて、ただただ頭を低くするしかないというのに、フォルスの物怖じしないその姿は精神の強さの象徴とも言える。 または、肝が座っているともいうのだろう。 「ふん…まぁ、いい」 先ほどまでの地震のような突発的な怒りは何処へやら、デフは下品にニタリと歯を見せ笑う。 長年、デフに扱き使われていたフォルスはすぐに感づいた。 こういう時は大きな仕事が入った時だと。 「フォルス。貴様にいい知らせだ」 「へぇ、奴隷の身分でも解いてくれるのですか?」 「馬鹿言え! だが、この話を受けて、上手くお前が立ち振る舞えば有りえなくもない…」 含みを持ったデフの言葉にフォルスの顔つきは変わった。 それほどの仕事などこじつけられたことはなく、どう言っても機嫌を悪くしないデフの異様な様子にもしかしたらという願望を生んで胸が高まった。 「フォルス……貴様は大都市で剣闘をすることになった」
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