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「それも都会も都会の都の城下街だ!
ある有名貴族が新しく剣士を雇いたいらしくてな。
強さだ、気品だ、容姿だ、と注文が多く仲介屋も困り果てていたところをお前の噂を聞きつけて、この田舎までやってきたらしい」
「なるほど……しかし、剣士は剣士でも俺は奴隷剣士だが?」
疑念を抱くフォルスにデフが鼻で笑い指を差す。
「だからこそだ! 今や剣闘は国家を代表する最高のショーだ。都会では貴族どもの間で自分に仕えた剣士を闘わせ合うのが流行ってんだとよ!」
「ふむ……元がそれなら、条件さえ合えばどんな身分でも構わないということか……」
全てを悟ったようにフォルスは頷くとそのまま顔を伏せた。
「当たり前だが、お前に拒否権はない。お前はしがない奴隷なんだからな!」
「わかっているさ……しかしな。もし、俺が居なくなったら、ここにいるみんながどうなるのかと憂いを感じている」
「なにぃ?」
デフは機嫌悪くしたのか顔を歪ませるがフォルスは頑として向き合う。
「このまま、心残りがあり過ぎては都でうまく闘えるか不安で不安で……」
口には出さないものの奴隷であるフォルスは家主デフに交渉という名の強制を申し立てたのだ。
フォルスが都での剣闘で活躍せねば、夢にまでみた貴族との奴隷の高額取引の可能性は皆無となり、それどころかデフの奴隷小屋の評判まで落ちる。
それを見越して、フォルスは交渉を持ちかけ、デフの目から視線を外さない。
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