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「…い、今…なんて…」
激しい水飛沫を感じるほどに滝に突き出した崖の上に幼子らしい肩で切りそろえられた金髪の少女は震える声で自分に背を向けている少年に聞き返した。
彼が自分にそんなことを言うなんて信じられなかったのと、きっと自分の聞き間違えだったと思いたかったのだろう。
しかし、振り返って少女を睨む黒髪の少年の怒気どころか殺気すら籠もったその顔は間違いなど許さないと言わんばかりであった。
「“いやだ”と言ったんだ」
「どうしてっ!? 私たちはあんなにうまくいってたじゃないっ!」
「確かに仲の良い幼なじみだったんだろうさ……けど、それは昨日までの話だ。お前が俺の両親を殺すまではなっ!!」
昨日まで優しく見つめてくれた少年の瞳は怨念に塗れ、優しく囁いてくれた少年の口から言い放たれた怒声に少女の顔はみるみる顔面蒼白となっていった。
「そして、身寄りのなくなった俺に情けでもかけるように“結婚しよう”なんて……虫が良いにもほどがある……いや…むしろ、それが目的だったのか…」
「ちがう…ちがう…違うのっ……お願い…クルス…私の話を聞いて…」
何度も否定し、何度も首を振った少女は少年…クルスの胸に泣きついた。
しかし、クルスはそれを冷たい目で見下し、片手で少女を振り払った。
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