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都市部郊外、キャスティン本邸。
血の海と化した闘技場のある城下街を少し離れれば、活気ある都市部に面しながら、広大な私有地内は自然豊かな土地とまさに楽園のような場所にキャスティン家のとてつもなく大きな屋敷がある。
そんなキャスティン家の屋敷に呼ばれたのは………。
「本日この時を以て、無所属隷属剣士フォルスは……キャスティン家の隷属剣士に命ぜられました」
黒白頭のフォルスだった。
片膝を付き、深く頭を下げて、契約の言葉を宣言すると目の前に立つ、今より自分の主となったガロス・キャスティンを見上げる。
「うむ」
威厳のあるガロスは深く頷くと用意された布に包まれた棒状の物を手に取り、布を外す。
中から出てきたのは、黒い鞘に黒い柄の漆黒に包まれた見事な剣だった。
そして、それを剣の漆黒さと同じくらいの黒い瞳を見開きフォルスは息を呑んだ。
「この剣は十数年前まで生きていた優れた武器商であり鍛冶師であり友人でもあった男の最後の作品と云われる剣だ。
名を──ティリエス──と鞘には刻まれている」
「ティリエス……」
ただ復唱しただけにガロスは感じたかもしれないがフォルスは親しい旧友の名を呼ぶように口づさんだ。
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