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「ふぅ……」
シャワーを浴び終え、さっぱりした体にズボンと肌着だけ着て、フォルスはベッドに座ったままティリエスの刃の手入れをしていた。
黒い鏡面に映るフォルスの顔はどこか儚げな印象を見せている。
「俺はエレナと…両親の仇のガロス……あの2人に復讐できれば、それでいいんだが……リーナをどうしたものか」
この日、初めて出会った少女にそういった感情を持つことの方が難しい。
しかし、放っておける存在ではないことは百も承知だった。
十数年前もそうやって情けをかけて……突き落とされたのだから。
────キンッ!
本心を胸の奥底に隠したようにティリエスを鞘にしまうとフォルスはベッドに横になる。
「まぁ、あんな子どもだ。エレナみたいに気を張る必要も無し、こんな生活の息抜きの相手とでも考えて、仲良くしておこうか……もしかしたら、俺の“夢”を叶えるために必要な人間になるかもしれないしな」
ゆっくり目を閉じるとフォルスは唯一の安息の地である夢の世界に旅立つ。
……と思ったが、すぐに引き返して目を開けた。
「あっ!……リーナの本……」
乱雑に置かれた一冊の本を手にするとフォルスは眠気を噛み殺しながら、リーナの本を読み始めた。
フォルスがキャスティン家に来て、最初の夜はとても長かった────。
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