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ちらりと木陰から顔を出して後ろを見てみる。
だが、リーナの予想は虚しくそこには白黒頭どころか誰も居なかった。
「……なんだ気にしすぎか」
よく考えれば、風なんて自然現象として突拍子もなく吹くもの。
白黒頭の彼が昨日吹かして見せたことで自分の中でおかしなことになっていた。
そう、自分に言い聞かせてリーナが肩をすくめていると………。
「人として後ろ向きよりは上向き前向きなって欲しいもんだ」
上から降ってきた声をリーナは聞き慣れていた。
会って1日で聞き慣れるというのもおかしな話だが、リーナの生活上、これまたおかしな話だがおかしな姉によって使用人がほとんど口を利かないためによく話す相手など皆無だった。
そのためもあってか昨日、日暮れまで話した彼の声をリーナはよく憶えている。
「ところで貴方はなんで樹に登ってるの?」
樹の太い枝に肩膝ついて座っているフォルスに呆れ顔でリーナが声をかけるとフォルスはフッと笑う。
「もちろん────」
枝から飛び降りるとフォルスはリーナの目の前に着地した。
「────後ろから現れると疑われるだろ?」
「それは自白かしら?」
「剣は抜いてないぞ? ただちょっと修錬のために鞘に納めたまま素振りしてたら熱が入って、つい両手使ってしまったんだ」
このあと、乾いた打撃音が中庭に響いた。
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