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絆。第1話
晴れ渡る空。澄み切った青い空を光希(こうき)は屋上で独り見上げていた。
「空って…どうして青いんだろう…」
光希は誰もいない屋上で独り寂しく呟く。周りには誰もいない。ただ、冷たい風だけが吹いている。
光希には友達がいない。暗我利(くらがり)に入ってからも、自分から積極的に話すことはせず、友達ができずにいた。そんな光希にも好きな子がいた。同じクラスの子。髪が長くおしとやかな性格の子。名前は、「西田真紀(にしたまき)」。その子は入学式のとき光希に唯一話しかけた子だった。光希はそれで一目惚れしてしまったのだ。だけどその子、真紀はクラスで結構モテる方だった。自分なんかが近づけるハズがない。そう思っていた。そんなある日、昼休みにいつも通り屋上にいたら、誰かが屋上にやってきた。光希は屋上の入り口の方を振り返ると、なんとそこにはあの西田真紀がいたのだ。
「あ、ああ、あの…なにか…よ、ようじでも…?」
光希はおどおどと聞く。すると真紀は、
「ねぇ。君いっつも独りでいるよね。なんで?」
光希は驚いた。そして戸惑いながら答えた。
「は、話すの…苦手…だから。とも…だちで、できないんです。」
真紀は無表情で光希を見下ろした。「あ、あの…なにか?」
光希は恐る恐る続けた。
「じゃあさっ!私が友達になったげるよっ」
光希はまたしても驚いた。友達になってあげる。そう言われたのは生まれて初めてだった。しかも自分の好きな人にそんなことを言われるなんて夢にも思ってなかった。
「僕なんかと…その、友達に…」
「そっ。君、独りで寂しそうだからさっ。私が君の友達になるよ」
光希は心の底から喜んだ。そして光希は力強く答えた。
「一年一組13番富田光希ですっよろしくお願いします!!」
嬉しさがこみ上げてくるようだった。
「西田真紀っよろしくねっ」そう言うと真紀は屋上から帰って行った。一人屋上に残った光希は言葉にならないくらい喜んだ。
あれから光希は毎日屋上で真紀と話すようになった。そして曇りの日。真紀が辛い顔をして屋上に来た。
「どうか…したんですか…?」
光希は心配そうに聞く。真紀はしばらくうつむいてから口を開いた。
「私のお父さんが…競馬で百万すったの…」
「…え?」
光希はとんきょな返事をした。真紀は言葉を続けた。
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