2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
まだ眠い…そう訴える体を無視して無理やり立ち上がる。
「今日で三日目か…」
小さな町にあるミンティア学園に通う一年生、山本孝史は呟いた…
アニメや漫画だと主人公を起こしてくれる妹や、幼なじみがいるものだが孝史にそんな幸せがあるわけがない。
妹がいるにはいるのだが生意気ですぐに孝史に反抗するため、孝史はあまり快く思っていない。
「今日の朝食は?」
リビングにいる妹に声をかける。しかし帰ってきた返事は
「作ってない。冷蔵庫あさって適当に食べちゃってよ…」
せめて朝食くらいは作ってもらいたいものだと思うものの声には出さない孝史だった。
仮に妹にそんなことを言おうものなら家から追い出されてしまう。
この家ではどんなときも妹が絶対なのだ。
「このプリン食べるけどいいだろ?」
「勝手にすれば。」
孝史はあまりに心無い妹の言葉にため息をついてしまう。
「私、今日は早く出るからあとはお兄ちゃんよろしく」
孝史が返事をするよりも早く妹は家を出て行ってしまった。
「昔はもっとかわいかったんだけどなぁ…さて、僕も行くか。」
忘れ物の確認を済ませ、孝史も家を出る。
いつもと変わらない街並みを見て、孝史は少し落ち着いた。
近道なので、孝史はいつも大きな広場を通ってミンティア学園に行く。
すると孝史の目に逆さまになった人が映った。
広場の中心にある大きな木からミンティア学園の制服を着た女の子が落ちてきたのだ。
少女は地面に叩きつけられた。
「うわぁ!!えっと…君、大丈夫?」
孝史は慌てて少女に近づく、すると少女は
「痛いよ~!!ふぇ~ん…」
と、泣き出した。
「とりあえず外傷はなさそうだね…よかった。泣かなくても大丈夫だよ、どうしてあんな大きな木に登ったりしたの?」
孝史は優しく言う。
すると少女は涙を拭いて教えてくれた。
「あの木に風船が引っかかっちゃったの。」
「ふうせん?あぁ、あそこの赤いの…」
「近くの銀行で貰ったの。すっごい嬉しくって、学園まで持って行こうとしたの。」
風船を学園に持って行こうとしている時点で少し変な感じもしたが、とりあえず孝史は引っかかっている風船を見た。
「あんなに高いところにあるんだもん、あきらめた方がいいんじゃないかな?」
「やだっ」
即答だった…
本気を出せば孝史に取れないことはないのだが、とにかく面倒だった。
少女を置いて行こうかと思ったが孝史の性格上それだけはできなかった。そんなとき、少女が言った。
最初のコメントを投稿しよう!