殺人鬼と吸血鬼

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ずぷ、と、首筋に何か硬い物を突き立てられる感覚。刺されるような痛み。 「ふぁ、あ……、んぅっ」 それから、ぴちゃぴちゃと、何かを啜るような水音。首筋が熱を帯びたように熱い。そこからじわりと全身に染み渡るように、甘い痺れが支配していく。 「――ジュル……ペロ」 「ひ、ぁ……」 戯れのつもりか、傷口とは関係のないところにまで舌が及んだ。首筋を舐り、そのまま肩口へゆっくりと下りてゆく。 気が狂いそうだ。頭もどこか朦朧としていて、役に立たない。 意識を保つため、唇を強く噛んだ。ぷつ、と、口端から一筋の血が溢れる。 「あら、もったいない」 「んむッ……!」 途端、唇を塞がれた。このまま一滴も残らず血を吸われるのではないかと思った。 何のつもりか、少女の舌が私の口腔に侵入してきた。蛇のようなそれが蠢き、私を捉え、絡みつく。じゅぷじゅぷという水音が路地に響いた。 蛇の動きは留まるところを知らず、奥歯から丹念に舐ってゆく。歯茎をなぞり、時折舌を絡ませられる。 仕上げとばかりに天井をずろりと舐め上げられると、びくんと身が跳ねた。 少女の口が離れる。雲の切れ間から月が覗き、月明かりが二人を繋ぐ銀の糸を照らす。
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