幕間_門前

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シン、と静寂が降り積もる闇の中、ふと聞き慣れた足音を聞いて、目を覚ました。 寝ていたわけではない。全身の気を研ぎ澄まし、周囲の気配を探っていたのだ。 だから遠くから歩いてくる我らが主の気配をいち早く察知することが出来た。伊達に門番を任されているわけではない。 先程主は用事がある、とだけ言い残してふらり何処かへ飛んでいってしまった。 こういったことは割と日常茶飯事なので特に驚くことではない。私はいつも通りいってらっしゃいませとだけ言って主を見送った。満月なので、ある意味で特に気を付けることはないだろうと思っていた。 が、どうしたことだろう。聞こえてくる足音は引き摺るような音を立てている。我が主はこんな奇妙な歩き方をしない。 それに加えて、この噎せ返るような血の匂い。これは、人間の血の匂いではない。 やがて見えてくる人影は、なんというか、サボテンのようだった。
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