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「ただいま。寝てなかった?」
「寝てませんよ、こんな満月の夜に。というかどうしたんですかその体。うわ、血生臭っ」
「油断してたらポロっとやられたわ。ご丁寧に忠告までしてくれたのにねえ」
「はあ、満月だからって調子乗ってえらいことしでかしたんでしょう。誘拐とか窃盗とか」
「あはは、似たようなものかもね」
「笑い事じゃ済みませんよ……で、どうしたんですかその針治療よろしく全身に突き刺さってるものは。ハンターにでもやられましたか」
「さあ?」
「さあ?って……まあいいですよ、その様子だと無事撒いたようですしね。館にまで攻め込まれでもしたら面倒で仕方ないですからね」
「それがね、持って来ちゃった」
「……は?」
主――お嬢様が抱えていた布の塊のようなものを持ち上げる。そこで初めてその存在に気付いた。
まるで空気に溶け込んだような希薄な存在感。気を操る私でも感知することが難しい。
塊の正体は、年端もいかぬ、まだ幼さを残した少女だった。ボサボサの銀髪に隠れて見えづらいが、首筋に歯形がついている。お嬢様に咬まれたのだろう。
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