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「うわあ……、よりによって幼女誘拐ですか。犯罪ですよ犯罪。閻魔様呼びますよ」
「任意同行よ。無理矢理だけど」
「それを誘拐って言うんですよ」
はあ、と溜め息ひとつ。
この方には、変わったご趣味がある。
いつも何処かへふらりと出掛けたかと思えば、変わったものを見つけては拾ってくるのだ。
この少女も例に漏れず、お嬢様のお眼鏡に適った逸材、といったところだろうか。
珍しい銀髪だったから、とか、綺麗な目をしていたから、なんて理由からかもしれない。
本当にそんな理由で、この方は変わり物を拾ってくるのだ。
「……で、先程から気になっていたのですが」
「ん?」
「その左腕、どうしたんですか。いや、左腕だった部位でしょうか」
「代価。腕の一本や二本くれてやるわ」
「文字通り出血大サービスってわけですか」
「んや、血は出ないのよね、何故か。ほれ」
そう言ってお嬢様はどこからか左腕だったものを取り出して見せた。
確かに、血が出ている様子はない。まるでそこだけ時間が切り取られたように、出血が止まっていた。
「うわあグロい。にしても再生遅いですね、満月なのに」
「何か呪いでもかけられたのかしら。磁力を失った磁石みたいにくっつかないのよ」
「ふむ……概念武装、とかですかね?」
「あははっ、だったら私は今頃死んでるわね」
「笑い事じゃないですって……」
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