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だとしたら、やはり強力な呪術や魔術以外に考えられない。
日光すら「気分悪いわね」で済ますお嬢様に作用するほどだ、並大抵の術ではないだろう。
それほどの敵に遭遇するだなんて、この方はいったい何をやらかしたのだろうか。
「ま、というわけでよろしく頼むわ」
そう言うとお嬢様は片手で器用に抱えていた少女をこちらに寄越した。
持ってみると、羽のように軽い。手足も折れてしまいそうなほどに細かった。
「どういうわけなのか解りませんが。えっと、それで何でしたっけこの子」
「とりあえずお風呂に入れてあげてちょうだい。私は見ての通りこの有様だし」
「ああ、水染みますよね。それでこの子は何です?」
「洗い終わったら適当に服を着せてあげて。その子の服ボロボロだし」
「そうですねボロボロですね。それでこの子は?」
「じゃ、よろしく頼むわ」
私の問いなど聞こえてないかのように、ずるずると、来たときと同様足を引き摺らせて行ってしまった。案外余裕がないのかもしれない。
途中で倒れたりはしないか心配だったが、この人間を預かるという使命を仰せつかったため、無言で見送るだけに留めた。
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