殺人鬼と吸血鬼

4/16
前へ
/23ページ
次へ
「こんな路地裏で何をしているの? 天体観測?」 「ええ。今宵は、月が綺麗」 「そうね、私も満月が一番好きよ」 私の月だもの、と言って少女は笑った。なんとなく、悪魔みたいだと思った。 昔から、月が好きだった。 太陽と違って、不躾に照らし過ぎないのが好きだった。 金属の冷たさしか知らない私には、それくらいの温度が丁度良かった。 「貴女、綺麗な髪をしているわね」 「そう?」 「ええ。まるで、月が落ちてきたみたい」 少女の言葉には、全面的には同意しかねた。 私はこの髪の色が、どちらかと言えば好きではなかった。 月の光に照らされ光る銀髪。夜に行動すれば、嫌でも目立つ。 目立つのは、苦手だった。 「突然なのだけど」 少女が切りだした。 「なに?」 「血を分けてくれないかしら」 「――――――」 その言葉で、ああそうかと納得した。 道理で今夜は、いつにも増して冷えるわけだ。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加