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「こんな路地裏で何をしているの? 天体観測?」
「ええ。今宵は、月が綺麗」
「そうね、私も満月が一番好きよ」
私の月だもの、と言って少女は笑った。なんとなく、悪魔みたいだと思った。
昔から、月が好きだった。
太陽と違って、不躾に照らし過ぎないのが好きだった。
金属の冷たさしか知らない私には、それくらいの温度が丁度良かった。
「貴女、綺麗な髪をしているわね」
「そう?」
「ええ。まるで、月が落ちてきたみたい」
少女の言葉には、全面的には同意しかねた。
私はこの髪の色が、どちらかと言えば好きではなかった。
月の光に照らされ光る銀髪。夜に行動すれば、嫌でも目立つ。
目立つのは、苦手だった。
「突然なのだけど」
少女が切りだした。
「なに?」
「血を分けてくれないかしら」
「――――――」
その言葉で、ああそうかと納得した。
道理で今夜は、いつにも増して冷えるわけだ。
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