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「ほんの少しよ。献血だと思って大人しくしていればすぐ済むわ」
「何型の血をご所望?」
「B型ね。あれは至高の味よ」
「実は私、ボンベイ型なの。
ご期待に添えずすみません」
「くすくす、嘘ね」
「……何故?」
「匂いで分かるもの」
少し誇らしげに言う少女を見て、ふと自分の体臭が気になった。
こんな路上で生活しているのだ、雨水や泥水だって幾度と無く浴びた。臭くないはずが無い。
だと言うのに少女は先程から笑みを絶やさず、顔をしかめることさえも無かった。
何か、悪魔が好むものでも発しているのだろうか。まるで心当たりが無い。
沈黙を了承と受け取ったのか、少女が近づいてくる。
私は緩慢な動作で、眼前にそれを突き出した。
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