31人が本棚に入れています
本棚に追加
「吸わせてくれないの?」
「それ以上近づかないほうがいい」
「おお怖い。しかも銀製じゃないそれ」
「悪いけど、他を当たってちょうだい」
「嫌よ。私は貴女がいいの」
「後悔するわ。色々な意味で」
「しないわ。運命だもの」
少女はくく、と悪魔的な笑みを浮かべると獣のように飛び掛ってきた。
私はそれを寸前で躱し、振り向きざまに一閃を見舞う。
案の定外れた。銀閃が虚しく空を切る。
「くふふ……、いい腕をしているわ、貴女」
「あなたはいい爪をしているわね」
「ありがとう。貴女の為に研いできたのよ?」
その時、つう、と頬を何かぬらりとしたものが流れた。
本当に、いい爪をしている。
――――ジュルリ。
少女が己の指に付いた紅色を舐めとる。
途端、恍惚とした表情を浮かべた。頬も熱を帯びていて、こころなしか息も荒い。
最初のコメントを投稿しよう!