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くるり、くるくる。
手のひらの中で弄ばせていたナイフを、逆手に握る。
冷たくて、無骨な感触が伝わってくる。ナイフの刃を月光が反射して、少し、眩しかった。
その眩さに背を向けるように、目を閉じる。そして深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。
「スゥ――――」
長い息を吐き終えると、頭がクリアになった気がして、気持ちよかった。
肺の中に沈殿した穢れを浄化してくれるようで、心地良い。
目を開けると、やはりそこには愉しげに笑っている少女がいた。どうやら夢ではないらしい。
「なにそれ、モクソーってやつ?」
「神への祈りみたいなもの」
「悪魔の目の前で何たることを」
「AMEN」
「あはは、神聖系は効かないよ」
「……残念」
聞きかじった程度の悪魔祓いは、意味を為さなかった。信仰心が足りない所為かもしれない。
元々無神論者の私には縁のないものだ。
カミサマなんて、何処にもいやしない。
あれは所詮、脆弱な人間共の拠り所として造られた都合のいい偶像に過ぎない。
少なくとも、私はあれをそう定義している。
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