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――七年後。
ウィンフォード王国
「パリス……これは何だ?」
眉間にシワを寄せて、箱型の機械をシゲシゲと、熱心に観察する青年。
黒い髪を無造作に耳まで伸ばし、険しい表情を浮かべている。
漆黒の瞳が印象的な青年、スコールだ。
「何って……自動販売機でしょ!?」
少し高飛車な調子で、呆れた様に言うのは、赤みの混じったブロンドヘアー、綺麗な白肌の美人、パリスだ。
細くスラッとした身体、胸もふっくらとしていて、大抵の男は振り返ってしまう、そんな美しさだ。
「自動販売機!? 使用法は?」
真剣そのものの表情で、パリスを見るスコール。
「はっ!? ッたく、そんな事も知らないの?」
パリスは面倒臭そうに答えた――だいたい今時、自動販売機の使い方も分からないなんて……。
<そんな事、自分で考えて!>そんな風に思うのに……。
「すっ、すまん」
シュンとうなだれるスコール。
これだ……まるで捨てられた子犬、ついでに背景に雨が降っているような、そんな儚く消えそうな目をする。
放っておけない、母性本能だろうか……。
「だっ、だから、そこのスイッチ押してみなさいよ! そしたら分かるわよ!」
ついつい言葉が強くなる――なんでイライラするんだろう?
「あっ、でも、お金……」
ボンッ! ガラガラガッシャン!――んっ!?
煙をモクモクと吐き出す自動販売機から、次々と勢い良く缶ジュースが飛び出ている。
「ほう……」
スコールは顎を触りながら、感嘆の表情で自動販売機を見ている。
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