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「あぁ……なんて事……」
パリスは、絶句して頭を抱える。
「どうしたパリス……」
ぶっきら棒に、缶ジュースを差し出しながらスコールは首を傾げた。
確かにお金を入れるようにとは、言わなかった、いやっ、正確には言おうとした……。
だいたい私は何も悪くないはず、でも、いやっ、その前に、あれしきで壊れる自動販売機がおかしいのでは?
待て待て、そもそも何で壊れるの? (スイッチを押す事の)どこに壊す要素があるのか?
パリスは、何を問題にすべきか、それすら分からなかった――唯一、理解できる事はあった。
「スコール! 逃げるわよ!」
「なぜだ? ちょっ、ちょっと」
パリスは、困惑の固い表情を浮かべたスコールの手を引き、一目散に逃げた。
<なんでいつもいつも、どうして私が……>
パリスは、沸々と沸く怒りを堪えながら走った。
いつもこうだ、スコールに巻き込まれる――今日だって私が悪いわけじゃない、なのに……。
パリスは近くの公園の、噴水の傍まで来ると、ベンチに腰を下ろした。
公園の木々の間から差し込む日光が、パリスの汗ばんだ肌をチリチリと焼く。
そんなパリスに
「どうだ? 飲むか?」
誇らしげに、スコールが缶ジュースを差し出す。
罪悪感などサラサラ抱いていない、そんな表情だ。
「あんたねぇ~、自動販売機壊しといて、何も感じないわけ?」
酷く機嫌の悪い声で、パリスは言った。
スコールは、キョトンとした表情で答える。
「壊した? 何をだ?」
「だ・か・ら・自動販売機!」
「なに? あれは壊れたのか?」
「どこからどう見ても壊れてたわよ!」
するとスコールは深刻な表情で答えた。
「俺が壊したのか?」
「そうよ!」
「なぜ壊れた?」
そんなスコールの答えに、パリスは悲しくなった――どうして私はこんな男を……。
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