プロローグ

5/5
前へ
/96ページ
次へ
「だが、使い方はマスターしたぞ?」 誇らしげに言うスコールの顔を見上げて、パリスは思った。 まるで初めて一人で着替えをした子供の、誇らしげな顔だ――これじゃ……。 「怒れないじゃない……」 パリスのそんな呟きに、首を傾げ険しい表情を浮かべるスコール。 そんなスコールに微笑みながらパリスは言った。 「今度からはちゃんと、お金入れるのよ!」 するとスコールは、納得したように頷きながら言った。 「なるほど……お金を入れなかったから壊れたのか……」 「あぁ、もう、それで良いわよ!」 パリスは疲れた様にうなだれた――『壊れたのは、貴方のせい』そう言いたかった。 「頂戴……」 パリスは疲れた声で、そう言って手を差し出した。 スコールは缶ジュースを、パリスに渡した。 「スコールも飲めば?」 パリスの言葉に、スコールも缶ジュースを開けた。 同時に缶ジュースに口をつける二人。 「まずっ!」 顔をしかめて言うパリス――苦味と甘さが混じった液体を、炭酸で割った、そんな味だ。 「そうか? なかなか美味いが……赤マムシエキス配合だそうだ」 そう言ってゴクゴクと喉に流し込むスコール。 「うげっ、赤マムシ? もう……最悪」 今日はツイてない、壊して、逃げて、最後は得体の知れない飲み物を飲まされ……。 そんな事を考えながらパリスが、ふと横を見ると、少し幸せそうに顔を弛めて、得体の知れない飲み物を飲むスコールが目に入った。 「まぁ、良いか……」 溜息を吐きながら、少し笑顔でパリスはそう呟いた。 そんなパリスを心配するように覗き込むスコール。 「どうした?」 ≪パコッ!≫パリスは、スコールの後頭部を意味も無く、叩いてみた。 「なにをする!?」 頭を触りながら言うスコールに、パリスは 「仕返しよ!」 そう、無邪気に笑いながら答えた。 こんな日々が、ずっと続けば良いのに……、パリスはそう思わずにはいられなかった。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

148人が本棚に入れています
本棚に追加