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「だが、使い方はマスターしたぞ?」
誇らしげに言うスコールの顔を見上げて、パリスは思った。
まるで初めて一人で着替えをした子供の、誇らしげな顔だ――これじゃ……。
「怒れないじゃない……」
パリスのそんな呟きに、首を傾げ険しい表情を浮かべるスコール。
そんなスコールに微笑みながらパリスは言った。
「今度からはちゃんと、お金入れるのよ!」
するとスコールは、納得したように頷きながら言った。
「なるほど……お金を入れなかったから壊れたのか……」
「あぁ、もう、それで良いわよ!」
パリスは疲れた様にうなだれた――『壊れたのは、貴方のせい』そう言いたかった。
「頂戴……」
パリスは疲れた声で、そう言って手を差し出した。
スコールは缶ジュースを、パリスに渡した。
「スコールも飲めば?」
パリスの言葉に、スコールも缶ジュースを開けた。
同時に缶ジュースに口をつける二人。
「まずっ!」
顔をしかめて言うパリス――苦味と甘さが混じった液体を、炭酸で割った、そんな味だ。
「そうか? なかなか美味いが……赤マムシエキス配合だそうだ」
そう言ってゴクゴクと喉に流し込むスコール。
「うげっ、赤マムシ? もう……最悪」
今日はツイてない、壊して、逃げて、最後は得体の知れない飲み物を飲まされ……。
そんな事を考えながらパリスが、ふと横を見ると、少し幸せそうに顔を弛めて、得体の知れない飲み物を飲むスコールが目に入った。
「まぁ、良いか……」
溜息を吐きながら、少し笑顔でパリスはそう呟いた。
そんなパリスを心配するように覗き込むスコール。
「どうした?」
≪パコッ!≫パリスは、スコールの後頭部を意味も無く、叩いてみた。
「なにをする!?」
頭を触りながら言うスコールに、パリスは
「仕返しよ!」
そう、無邪気に笑いながら答えた。
こんな日々が、ずっと続けば良いのに……、パリスはそう思わずにはいられなかった。
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