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<俺も混ざりてぇ~。>
ひしと目の前で抱き合うシルフィ、ソーヤを見て、フレアは唇をかみ締めていた。
ふと検査台に目をやるとスコールが慣れない不器用な手つきで検査器具を装着していた。
「シルフィ、ソーヤ!少し離れていろよ!」
フレアは神妙な面持ちで二人に言った。
「どういう事ですか!?まさか貴方……妬いているのかしら?」
少し意地悪にシルフィはフレアに返した。
「何を言ってるんだ?あのスコールが……あのスコールが、あの精密装置を使うんだぞ!?」
フレアは必死だった。そして知っていた――スコールが始めてエレベーターに乗った時、ほんの少し魔力を流せば良いスイッチに大量の魔力を流した為、そのエレベーターはビルの二区画を吹き飛ばして爆発した。
初めて魔力レンジを使った時も、初めて魔力式コンロを使った時も――そう、スコールは機械オンチなのだ!
シルフィはハッとした様子で一筋の汗を額に浮かべた。
「良いこと?ソーヤ……なるべく離れるんです!」
シルフィはイソイソと出口の近くまでソーヤを引きずる様にして避難した。
「一体急にどうしたんですか!?」
唯一、状況を理解出来ていないソーヤは困惑していた。
そんなソーヤの質問に
「大丈夫です!貴女は私が守りますから!」
そうシルフィは答えた。――まるで追い詰められた姫君を一人で守り抜く勇者の様な表情だ。
ただならぬ雰囲気にソーヤは口を閉じるしかなかった。
「では、魔力を流して……」
そんな検査官の言葉を聞いてシルフィは目を閉じた――まるで悪魔の囁きだ。
<爆発はまだ!?>
シルフィは目を開けた。
検査官はシゲシゲと熱心に機械を見ている。
「君……魔力流している?」
検査官がおもむろにスコールに聞いた。
「当然だ!」
相変わらずの仏頂面で答える。
「君……ゼロだね……」
検査官が――捨てられた子犬を見るような目でスコールを見て――言った。
「問題ない!」
スコールは誇らしげに少し口元を弛めながらそう答えた。
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