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その昔……このイブリースと呼ばれる世界に、人間という種族しか存在せず、人間が全ての者を支配し服従させていたとされる遥か昔……人間は、夜空に輝く星の彼方まで船で旅していたと言われる。
しかし人間は、戦う事をやめられず、その文明のほとんどを戦火によって焼き尽くしたとされている。
歳月は流れ、いつからか魔法という力が歴然と存在し、人間、エルフ、獣人など多種多様な種族が存在するようになったが、それでもイブリースに平和が訪れる事はなかった。
いつからか、人間は人間以外の種族を忌み嫌い、差別し、虐げるようになっていた。
そんな中、二十年前、強大な魔力を持つ一人の異種族を中心に一部の異種族達が集まり、人間の支配に反旗を翻した。
それに各地の異種族が呼応して決起し、戦火は瞬く間に世界に広がった。
当初、数で勝る人間は優勢に戦いを進めていたが、魔力や力で人間に勝る異種族の能力の前に、戦線は徐々に疲弊していった。
そしてある時を境に、戦局は異種族の優勢に転じ、異種族の人間に対する虐殺が始まった。
異種族の高い戦闘能力の前に、人間は為す術もなく人口は減り続け、もはや人間という種族の命運は、風前の灯し火かに思われた。
そんな中、後に≪血まみれピエロ≫と呼ばれ、異種族、人間の双方から忌み嫌われる事になる者が現れた。
≪血まみれピエロ≫は、小柄で子供のような風貌であったが、顔は常に血と土に塗れ、各地の戦場に現れては、人間、異種族、双方を、強力な魔法を駆使して一人で殲滅……というよりも虐殺といったほうが良い残虐さで壊滅に追い込んでいった。
≪血まみれピエロ≫の出現により、各地で戦局が停滞し膠着状態になった頃、≪血まみれピエロ≫は突如、姿を現さなくなった。
それと時を同じくして後に≪正義の守護神≫と呼ばれ、敬い尊ばれる事になる一人の青年と、後に≪正義の番人≫と呼ばれる事になる一人の少年が現れた。
二人は人間だったが、志を同じにする者ならば異種族であっても分け隔てなく仲間にした。
二人は、他の誰よりも強大な魔力で、二十年前に最初に立ち上がり、異種族の王となっていた一人の異種族に戦いを挑んだ。
後に≪イーストブルーの戦い≫と呼ばれるこの戦いは、七日七晩に渡って続いた。
その結果、異種族の王は倒され十五年に渡って繰り広げられた世界大戦は終わった。
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