負け組

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「輝弘ーごはんよー」 沢山の漫画やゲームケースの散らばった小汚い部屋に花水はいた。 パソコンの真上には複数のフィギュアが置いてあり、花水は生気の感じられない表情で何やらキーボードいじっている。 画面に映し出されていたのは『将棋オンライン』というゲームだった。 花水はログイン名に『zero』と入れ、そしてパスワードを打ち込んでログインを行う。 「へへ…」 ランキング一覧を見るとzeroというユーザーは一位に輝いていた。 この引きこもり生活、花水がひたすらやり続けていたのはこのゲームだった。 人間一つの事に打ち込むと何か偉業を成せるというのは事実で、数々の猛者の多いこのオンラインゲームでzeroは長い間1位に輝き続けていた。 そのためにこのユーザーはゲームマニアの間では『伝説』とさえ囁かれていた。 それが花水にとってはこの上なく充実感を感じた。 現実を忘れる事ができた。
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