Diamond💍Ｂreak💥

『デモーニッシュ・ウーマン』

「そうだよね?“VT”君?」

そういって博士と呼ばれるオヤジさんは俺を見る。

「へ?“ぶいてぃ”?」

「そうだよ。“VT”君。早速だけど、今回は『イカロニア』だから。」

さっきから、このおっさんは意味が分からないことばっかり言っている。

『ぶいてぃ』?

『イカロニア』?

一言言わせてくれ、わけ分からん!!…と。

「多分、人違いですけど。」

とりあえず言ってみたが無駄だった。

「いや、君がVTだ。」

さっきの質問に意味はあったのだろうか。

「兎に角、急いで貰おうか。」

正直、俺はこの段階では新手のドッキリかと考えてた。
が、次の行動でこの人達は“マジな連中”ということを信じることになってしまう。

オヤジは、四角い手で収まる位の黒いボックスをコートから取り出し、地面に

叩きつけた。

パキッと音たてるとさっきまで夕暮れだったけしきが一気にターコイズに変わる。

「どーなってんだ……?」

雨山は、あたりをじっと見つめて人差し指を指した。

「あれ…。」

俺は雨山の震える指先を見た。

「車が止まってる…?」

そう、車だけではない。塀を降りようとする猫や空に浮かぶ飛行機。

周りのあらゆる物の動きが静止し、音の無い世界へと変貌した。

「いや、時が止まってるんだ。そして……。」

オヤジは、白いボックスを逆のコートから取り出して地面投げつける。

すると…。

オヤジの近くに黒い２ﾒｰﾄﾙ程の穴が出来た。

「蜃気楼?」

「いや、空間がねじれてるんだ。」

「なるほど…ね。」

「何か分かったのか?そうだろう、雨山?」

「“ファンタジー”ね！」

「……………。」

すでに、コイツもオヤジさんサイドだったか。

「お前、順応早いな。」

「テヘッ。」

可愛くねぇよ!!