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俺の膝を枕にして横になったと思ったら、すぐに寝息が聞こえ始めた。それでも俺は手触りのいい黒い髪を梳くのをやめなかった。
「獅毅」
名前を呼んでみても全然動かない。かなり疲れてるみたいだ。それも精神的に。
パーティーでどんなことがあったのかは既に聞いた。いろんな名家のお嬢さんに話しかけられたみたい。
妬かなかったと言ったら嘘になる。ほんとのほんとは嫉妬でムカムカムカムカしてた。でも獅毅にその気はないって話聞いててわかってたし、今は獅毅優先だったから頑張って我慢した。……ちょっとだけ言っちゃったけど。
『だったら美咲くんは、パーティーから帰ってきた獅毅を甘やかしてあげて。ね?』
生徒会室で滸先輩に言われたこと。最初は意味がよくわからなかった。それに加え、全然生徒会に関係することじゃなかった。結局滸先輩の笑顔が怖かったから、なにも聞けなかったけど。
生徒会室から追い出された俺は、とにかくまず獅毅の部屋に上がり込んだ。それからどうして滸先輩はあんなことを言ったんだろうか、と考えながら獅毅の帰りを待った。
で、獅毅が帰ってきてなんとなくわかった。いつもの獅毅じゃなかったもん。いきなり抱きついてきたし、それに「ただいま」って言わなかった。
「だから今日の獅毅はちょっと変だ」
つんつんと頬っぺたをつついたら、嫌そうに眉を寄せた。ちょっぴりかわいく思えて、くすっと笑ってしまう。
獅毅が変なのはわかったけど、次はどうやって甘やかせばいいのかがわからなかった。
だから頑張って世話を焼いた。ご飯作って待ってみたり、ボタンしてやったり、髪拭いてやったり。今の膝枕だってそう。恥ずかしくて滅多にやんないし、獅毅から要求してくることもなかった。髪だって素直に拭かせてもらったこと一度も……って、あれ?
「ここまで抵抗されなかったことって一度もないよな。そういえば」
ボタンも。髪も。膝枕も。
以前あまりにも眠そうだったから、嫌がる獅毅に無理矢理俺の膝を貸したことはある。
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